備忘録（ちょんまげさんのクチコミ投稿）

人生は自分の身体で見てきたもの、感じてきたものが全てだと思う。 写真映りなどの表面的な「見映え」や「薄っぺらいスタイリッシュ感」、情報化による「デザインの多用、盗用」。そして安全性や利便性を追求し標準装備されてしまう「余計な機能」。人間は無力化され、かつての道具の道具になっていく。これは作る側が本当に良いと思っているのか、買う側が本当に欲しいと思っているのか、私にはよくわからない。 私はデザイナーの端くれだが、昨今の車市場について、ちょっと理解に苦しむ。 車に関しては素人。しかし買う以上、一応は自分の価値観に沿うものを、、なんて思って探し始めたのが甘かった、、 自分の身の丈に合うもので、欲しいと思うものがどこにも無かった。思いきって、予算を3倍にする！と決断したもののそれでも納得のいくものが無かった。全然欲しくない！あーもう私は車は買わない方がいいだろう、、と途方に暮れていた。 それでもしぶとく半年以上、カーセンサーを毎日チェックしていた。妻は呆れていた。 百聞は一見にしかず、と気になったものは、遠方でも見に行っていた。職業柄、写真はほとんど信用してない。 空いた時間に家族旅行もかねて、数々のディーラー、販売店を巡る日々。そんな中、これはと気になった車が大阪に。大阪か。久しぶりの関西。暑くなる前に行こう。5時間以上かけて、いつものように一泊家族旅行ついでに見に行った。 「なんだこのボロボロのお店、、（失礼をお許し下さい）」 「なんだこの立派な車、、美しい、、新車？！新古車？！デザインもなんだか愛おしい（笑）」 「というか本当に20年以上前の「大衆車」！？ 　高級車にしか見えないけど、、」 そしてそれ以上に、、 「なんなんだ、、この素敵な店主さんは、、」 その場で即決だった。 とにかくお金の時代。振り込みまでは必死に営業、振り込んだら塩対応なんてよく聞く話。 ちょっと信用できないディーラーさんにも何回かお会いした。 でもこの人でダメなら自分は相当に運がないと決めて、さっさと振り込んだ。 ここの店主さんは、本当に正直な方なんだと思う。 メールも電話もマメ。進捗写真もたくさん送ってくれる。店主さんがどんどん優しくなっているような気がしていたが、思い返すとおそらく店主さんはずうーっと同じで、優しい。私がどんどん信用していっただけだ（笑） 親切にしてくれるのは、本当に車が好きだからか。車への愛のおこぼれを授かったのかもしれない。 最後の納車日は炎天下の中、5時間！ 立ちっぱなしで、私のような若造に、車のことはもちろん、仕事観やさらには人生観まで、ご自身のご経験を惜しげもなく語ってくださり、私の考えもよく聞いて下さった。とても楽しかった。 その一日で、よく焼けた。 職人さんのようにどす黒い首になった。 正直に書くと、まだまだ駆け出し者で、つい最近までジリ貧だった。だから今回は人生で1番高額な買い物となった。前途した通り最後はヤケクソになっていて、不本意ながら予算は大きくなっていた。でもヤケクソに大枚を叩かず、最後まで諦めず本当に良かった。 身の丈にあった金額に収まり、納得のいく一台に出会えた。 何よりも今回は、学びしか無かった。店主さんからは本当に学ばせて頂いた。言葉が重かった。刺さった。 子供の頃見たタケシ映画って、こんな感じだった。 その他のことは、とても書ききれない、、 他の方々のクチコミの通り（笑） 車からも学ばされる。日本のものづくりは本当に世界一だったんだ、、とその片鱗を見せてくれる。ものづくりに関わる人間として、ハンドルを握るたび、身の引き締まる思いがする。これが只の大衆車だった時代に思いを馳せ、その恩恵にあずかれることを先人に感謝し、しっかり未来を見つめたい。 （これが私の体験です。僭越ながら私自身の備忘録をサイトに書かせて頂きました。他の方の参考になることがあれば幸いに思います。）